こんにちは、甲種1類 消防設備士の岩崎です。
今回は、ブログをご覧いただいた方からお問い合わせいただいた内容について、
少し深掘りして検討してみたいと思います。
テーマは、
「折り上げ天井(天井段差)がある空間に、スプリンクラーヘッドをどのように配置するのか?」
です。

今回の検討条件は、東京消防庁管轄内とします。
お問い合わせいただいた内容は、次の2点です。
お問い合わせ内容

① 写真のように下がり天井側にスプリンクラーヘッドを2個設置した場合、折り上げ天井側にある既存の2個は不要になりますか?
② 下がり天井側だけにスプリンクラーヘッドを設置した場合、折り上げ天井と下がり天井の間は「未警戒」になりませんか?
今回は、この2点について考えてみます。
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まず、結論から
①については、
一定の条件を満たせば、折り上げ天井側のスプリンクラーヘッドを設けない計画とすることは可能です。
その条件として重要になるのが、
「ほかのスプリンクラーヘッドによって、床面が有効に警戒されているか」
という点です。
②についても、
下がり天井側のスプリンクラーヘッドによって、その範囲の床面が有効に警戒されているのであれば、
天井段差があることだけを理由に、直ちに「未警戒」となるわけではありません。
ただし、これは天井の形状や段差寸法、ヘッドの位置、周囲の障害物などを含めて判断する必要があります。
では、具体的に見ていきましょう。
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スプリンクラーヘッドの周囲には「空間」が必要
スプリンクラーヘッドの周囲に関する考え方が示されています。
水平方向300mm以内
垂直方向450mm以内
の範囲について、散水障害となるものを設けないようにするという考え方です。

なぜ、このような空間を確保するのでしょうか?
それは、スプリンクラーヘッドから放水された水が、
梁や天井の段差、その他の障害物などに当たることで、散水が妨げられることを防ぐためだと考えております。
スプリンクラーは、単純に「水が出ればいい」という設備ではありません。
想定した範囲に、適切に散水できること。
ここが重要になります。
なお、収納庫やトイレのSKなどは形状によって、この離隔寸法について取り扱いが異なる場合があります。
(そもそも、空間が狭く離隔が取れない場合)
したがって、現場では一つひとつの条件を確認する必要があります。
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「梁・垂れ壁等がある場合」はどう考える?
次に、今回の問い合わせに関係する重要な部分です。
東京消防庁の基準には、
梁、垂れ壁等がある場合
についての考え方も示されています。

ここで、折り上げ天井のような「天井段差」が「たれ壁」として
問題になってきます。
例えば、天井の段差が250mm程度ある場合、
「段差から1.5m以上離す」と表記されています。
今回お問い合わせいただいた方も、おそらくこの部分をご覧になり、
「この条件を満たさなければ、折り上げ天井と下がり天井の間が未警戒になるのでは?」
と考えられたのではないでしょうか。
実は私自身も、この部分については現場で長い間悩んできました。
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私自身も、何度も消防署に確認してきました
私はこれまで十数年、スプリンクラー設備の施工に携わってきました。
天井段差がある現場では、
「このヘッドは必要なのか?」
「こちら側のヘッドを無くしても大丈夫なのか?」
「この配置で床面全体を警戒できているのか?」
といったことを、その都度確認してきました。
そして、
必要に応じて所轄消防署へ協議にうかがい、
具体的な図面をもって、消防との協議内容を議事録として残してきました。
ここが、消防設備の難しいところでもあります。
図面上では同じように見える天井段差でも、
建物の用途や構造、ヘッドの位置、周囲の障害物などによって、
実際の仕上がった現場では、イメージが異なる場合があります。
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「🔷」で示された部分にも注目
東京消防庁の資料を見ると、基準の中には「🔷」で示されている項目があります。
この部分は、法令そのものの規定というよりも、
東京消防庁における指導上の基準として扱われるものです。
そのため、
「🔷だから大丈夫」
という意味ではありません。
実際の設計・施工では、管轄消防署との協議が重要になります。
私自身も、過去の現場では所轄消防署へ確認し、その結果を踏まえて施工してきました。
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では、折り上げ天井側のヘッドは無くせるのか?
ここが今回の質問の核心です。
結論としては、
折り上げ天井側にスプリンクラーヘッドを設置しないとすることは可能です。
ただし、
ほかのスプリンクラーヘッドによって、床面が有効に警戒されているかどうか。
です。
つまり、下がり天井側に設置したスプリンクラーヘッドによって、
床面の警戒が満たされるのであれば、折り上げ面のヘッドは無くせます。
そして、
この天井段差が1m、2mある場合は??と検討したこともあります。
これも、悩みました。
話は、脱線してしまうので少し触れるだけにしますが、
スプリンクラー消火設備の「感熱開放継手」を使用する場合には、
この段差のような部分は、注意が必要です。


今回の「埋込型」スプリンクラーヘッドについては、
段差の大きさによる設置規定等は特にありません。
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昔は「放水曲線図」を見ながら検討していました。
私自身、以前はスプリンクラーヘッドの放水曲線図などを確認しながら、
「この段差は大丈夫なのか?」
「この折り上げ部分、は散水障害にならないか?」
「厨房フードや照明器具との距離はどうか?」
といったことを一つひとつ検討していました。
特に大型物件では、基準階があり同じおさまりの箇所がフロア分存在します。
システム天井、LGS天井、折り上げ天井、段差天井、スケルトン天井……。
意匠上のデザインや、現場の施工性、必要性を考慮し
消防設備の配置を、どのように両立させるか。
これは現場監督として、非常に悩ましいところです。
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意匠設計と消防設備の「せめぎ合い」
実際の現場では、
「この折り上げ天井内にスプリンクラーヘッドを付けたくない」
と、意匠設計の方から言われることもあります。
当然です。
折り上げ天井やデザイン性の高い天井では、
スプリンクラーヘッドが1個あるだけで、空間の印象が変わってしまうことがあります。
だからこそ、
消防設備の基準を守りながら、できるだけ意匠を邪魔しない配置を考える。
これも、私たち施工側の仕事の一つだと思っています。
ただし、
あえて折り上げ天井側へ ヘッドを配置したほうが、
全体としてヘッド数を少なくできるケースもあります。
つまり、
「折り上げ天井だからヘッドを無くす」
という考え方でも、
「折り上げ天井だからヘッドを付ける」
という考え方でもありません。
現場ごとの条件を確認して、最も合理的な配置を検討することが重要です。
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スプリンクラーヘッドは「個数」だけで判断しない
今回のお問い合わせを通して、改めて感じたことがあります。
スプリンクラー消火設備の配置を考えるとき、
「ヘッドが何個付いているか」
だけを見てしまうと、本質を見失ってしまいます。
大切なのは、スプリンクラーヘッドの「目的」です。
その配置によって、『消火』または『延焼拡大の防止』を確実に果たすことです。
そして、
SPヘッドの周囲離隔の確保、散水障害となるものがないか。
さらに、
法令・審査基準・消防署との協議内容を踏まえて、適切なSPヘッド配置になっているか。
ということです。
折り上げ天井や下がり天井がある場合には、
単純に「天井が違う高さだから、それぞれにヘッドを付ける」という判断ではなく、
全体のバランスを見ながら配置を検討する必要があります。
具体的な検討

写真をもとに、要約してCAD化してみます。

仮定で、 折り上げ天井 CH3000
中段の天井 CH2650
出入口 CH 2500
スプリンクラーヘッドの警戒円の種類は、
3種類あります。 r=2.3m、2.6m、2.8mです。
r=2.6mとして 現状の配置を図面化します。

この図面をもとに、中段天井にヘッド配置をすると、
床面警戒の「未警戒部分」が発生します。
r=2.8mのヘッドであれば、
この空間内は、SPヘッド3個のままで満たします。
かつては、
スプリンクラーヘッドの配置に関して、
東京消防庁の質疑応答によって統一されるまで
所轄の消防署ごとに見解が違っていました。
もちろん消防法をベースに規定されているのですが、
スプリンクラーヘッドの放水について、
「有効に放水されること」というあいまいな表現が
所轄ごとに違っていたのです。
特に、「丸柱裏の窓際の警戒に関して」などは、
工事着手前には、現場ごとに消防協議を行ったものです。
実際の建築平面図にSPヘッドを配置して、
ヘッド周囲の離隔と、窓際の納まりについて明確に協議していました。
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/office_adv/jimukensa.html
ぜひ、東京消防庁の公式資料や質疑応答集などもご確認いただき、

時代の移り変わりに順応した水系消火設備の
プロフェッショナルとしてご参考にしてください。
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最後に
今回お問い合わせいただいた内容について、私なりの経験と東京消防庁の基準を踏まえて整理してみました。
ただし、
消防設備は建物の用途・構造・天井形状・ヘッドの種類・配置などによって判断が変わる場合があります。
そのため、
この記事だけを根拠に施工判断をするのではなく、
実際の設計・施工では、最新の基準を確認したうえで、
必要に応じて管轄消防署と協議することが重要です。
私も現場では、迷ったら確認します。
そして、
「たぶん大丈夫」ではなく、「なぜ大丈夫なのか」を説明できる施工をする。
これを大切にしています。
消防設備は、普段は目にも止まらない設備です。
だからこそ、
見えないところほど、きちんと考える。
それが、消防設備士としての仕事だと思っています。

