夏季休暇が終わったと思えば、すぐにシルバーウィーク。
そして気がつけば、あっという間に年末がやってくる。
人生は、本当に短い。
刻一刻と時間が過ぎていく中で、
弱体化が進む日本経済を眺めながら、ふと思うことがあります。
「労働時間が規制された今の世の中で、
技術者と呼ばれる人間は、
いったいどこまで成長できるのだろうか」
ある分野で一流になるには、
「1万時間の法則」が必要だと言われています。
元サッカー日本代表の本田圭佑氏は、
「量をこなしていないやつに質を語る権利はない」
という趣旨の言葉を残しています。
私は、この考え方には技術者にも通じるものがあると思っています。
机の上で戦術の本を何冊読んだところで、
実際にボールを蹴らなければ、サッカーは上達しない。
それと同じように、
図面や施工要領書をいくら読み込んだとしても、
実際の現場で、汗を垂らしながら狭いシャフトの中の配管を納め、
他業種との干渉に悩み、
「どうすれば納まるんだ?」
と頭を抱え、
試して、失敗して、やりなおしたり、修正する。
その繰り返しの中でしか身につかない技術があります。
リモートワークが普及し、
画面の中だけで効率よく仕事が完結するように見える現代。
もちろん、リモートワークそのものを否定するつもりはありません。
AIを活用し、
これまで人間が何時間もかけていた作業を短時間で終わらせる。
これは間違いなく、大きな進歩です。
しかし、
「効率化できること」と
「経験しなければ身につかないこと」は、
同じではありません。
新築現場で設計図から施工図を起こす。
実際の躯体を確認する。
既設配管を確認する。
他業種の設備とぶつかる。
図面と寸法が合わない。
材料を変更する。
そして、もう一度考える。
こうした「現実の問題」と対峙したときに初めて、
自分がどこまで理解していて、
どこから先を理解していないのかが見えてきます。
知識は、経験によって技術になり、
技術は、失敗によって磨かれていく。
私はそう考えています。
だからこそ、
今、AIの台頭に漠然とした危機感を抱いている人も多いと思いますが、
本当に恐れるべきものはAIそのものではないのかもしれません。
私たち人間が、
「圧倒的な量をこなす」
「圧倒的な熱量で挑戦する」
「失敗して、また考える」
という機会そのものを失ってしまうこと。
こちらのほうが、私は怖いと思っています。
AIは、知識を与えてくれる。
答えを導き出してくれる。
作業を効率化してくれる。
しかし、
「現場で何が起こるのか」
「なぜ、この納まりではダメなのか」
「どうすれば、もっと良くなるのか」
そこに向き合い、判断する経験まで、
すべてAIに任せてしまっていいのでしょうか。
資源の乏しい日本が、
これまで世界で存在感を示してきた背景には、
人間が時間をかけて技術を磨き、
現場で試行錯誤を繰り返し、
「もっと良いものをつくろう」
と努力してきた歴史があります。
日本の強みは、
単なる知識量ではなかった。
「現場で問題を解決する力」
だったのではないでしょうか。
AI時代だからこそ、
私は若い技術者に伝えたい。
効率化することは大切です。
AIを使うことも大切です。
しかし、
「効率よく経験すること」と
「経験そのものを省いてしまうこと」は、
まったく違います。
仕事を早く終わらせることだけが、
生産性ではない。
その時間で、
「何を身につけたのか」
「どんな問題を解決できるようになったのか」
「昨日の自分より、どれだけ成長したのか」
そこまで含めて、
本当の生産性なのではないでしょうか。
AIに仕事を奪われることを恐れるのではなく、
AIを使って、より高いレベルの仕事に挑戦する。
そして、
人間にしかできない「現場力」を磨く。
これからの技術者には、
その両方が必要になると思います。
人生は、本当に短い。
だからこそ、
ただ効率よく時間を消費するのではなく、
その時間を、
自分の「武器」をつくるために使いたい。
AI時代における、
本当の「成長」と「生産性」。
その答えの一つが、
今も現場にあるのではないでしょうか。



