こんにちは。甲種消防設備士(甲種1類)の岩崎です。

今回は、水系消火設備に設置されている**「補助用高架水槽(中間水槽)」**の改修工事をご紹介します。

原因特定が少し厄介な「中間水槽の満水警報」のトラブル事例です。

ただ交換するだけではない、将来のメンテナンス性を考えた製品選定のポイントを、

現場のリアルな判断と合わせて解説します。

消火水槽の1つである補助用高架水槽は屋上に設置されているため、

建物管理者の方でも目にする機会は少ない設備ですが、

スプリンクラー設備などの水系消火設備において重要な役割を担っています。

(途中階にブースターポンプがある建物は、ポンプと一緒に中間水槽はあります。)

今回の工事は、水槽の**「満水警報」**が発報したことをきっかけに、現地調査と機器交換工事を行いました。

補助用高架水槽(中間水槽)の役割とは?

補助用高架水槽は、「中間水槽」「補助水槽」と呼ばれることもあります。

主な役割は、消火配管内を常に充水状態に保つことです。

ポンプ方式の水系消火設備では、

火災時に素早く放水できること、

そして配管内部の腐食を抑制するため、

配管内は常時充水されている必要があります。

なお、

補助加圧ポンプ(ジョッキーポンプ)が設置されている場合や、

乾式の連結送水管などでは、この水槽が省略される場合もあります。

また、**「減水警報」は消防法令により必要とされていますが、

今回のような「満水警報」**は建物の維持管理を目的とした監視信号であり、

消防法上必須の設備ではありません。

満水警報が発報したら、まず疑うこと

「屋上の補助用高架水槽で満水警報が発報しています。」

この連絡を受けたとき、

私が最初に疑ったのは逆止弁(チャッキバルブ)の不具合でした。

本来、逆止弁はポンプ側から補助用高架水槽へ水が逆流しないようにする役割があります。

しかし、逆止弁の機能が阻害されると、

ポンプ側の圧力によって少しずつ水槽へ水が押し戻され、

水位が上昇し、満水警報が発報することがあります。

まずは現地確認です。

建物は築年数が経過しており、水槽周りの状況から判断すると、

新築時から大きな更新は行われていないようでした。

水槽には、

・連結送水管(屋内消火栓兼用)
・スプリンクラー設備

の2系統が接続されていました。

現地調査を行い、必要な材料の選定と施工方法を検討します。

お客様へご提案した2つの工事プラン

今回、お客様には2つの施工方法をご提案しました。

① それぞれ既存と同じ機器に更新する方法

② スプリンクラー設備側のみ、ウェハー型ウィングチャッキバルブ(バタチャッキ)へ変更する方法

もちろん、それぞれのメリット・デメリットをご説明したうえで、ご判断いただきました。

なぜバタチャッキを提案したのか

②をご提案した最大の理由は、将来の維持管理のしやすさです。

消防認定品であるウェハー型ウィングチャッキバルブ(バタチャッキ)は、

既存のスウィングチャッキのメタルタッチ構造とは異なり、

ゴムシートによって止水する構造になっています。

止水面を見比べていただくと分かりますが、

止水性能は大きく向上しており、逆流によるトラブルを防ぎやすくなります。

では、なぜ連結送水管側は既存機器の交換とするのか。

理由は、それぞれの設備に求められる「目的」が異なるからです。

スプリンクラー設備は、配管内を常時「加圧された状態」を維持することが重要です。

一方、

連結送水管はスプリンクラー設備のように常時加圧される設備ではなく、

配管内が充水状態で維持されていれば十分に機能します。

連結送水管は、竪管への充水しかないので

通常の状態では水槽側に、水が押し込まれることはありません。

そのため、今回は連結送水管側は既存と同様の構成でも十分と判断しました。

ただし、

新築工事で施工する場合は、

将来的なメンテナンス性も考慮し、連結送水管にもバタチャッキを採用することが一般的です。

既存更新にもメリットはある

①の既存更新にも大きなメリットがあります。

既存機器はJIS規格品のため、長年経過していても全長などの寸法が変わらないため

そのまま配管等を触らずに同じ製品へ交換できるます。

つまり、

既存配管をそのまま活かし、

機器だけを更新できることが最大のメリットです。

一方で、メタルタッチ構造のため、

ゴミ噛みなどによる止水不良が起こる可能性があり、

交換後も同じような満水警報が再発するリスクは残ります。

今回の施工内容

スプリンクラー設備側のみ配管を一部改修し、ウェハー型ウィングチャッキバルブへ変更しました。

さらに、将来の点検・保守を考慮して、直近にエア抜きも新設しています。

無事に復旧し、水槽への逆流は無し。

満水警報も解消することができました。

まとめ

消防設備の改修工事では、

「壊れた部品を交換する」だけではなく、

その設備が今後10年、20年と安定して運用できることを考えた提案が重要です。

設備ごとの役割を理解し、

建物の状況や維持管理まで見据えて最適な施工方法を選択する。

それが現場代理人として私が最も大切にしていることです。

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