こんにちは。
水系消火設備の現場担当者、岩崎です。
今回は、消火ポンプ室に設置される「一次圧調整弁」について、
・なぜ必要なのか
・施工前に何を検討するのか
・現場担当者はどこまで考えて施工するのか
この3つを現場経験をもとに解説します。
スプリンクラー設備を安全に機能させるためには欠かせない重要な設備です。
一次圧調整弁とは?
一次圧調整弁は、一次側の圧力を一定に保持する自力制御弁の一種で、「逃し弁」と呼ばれることもあります。
簡単に言えば、
必要以上に高くなった圧力を逃がして、設定した圧力を維持する機器です。
例えば、設計上必要な送水圧力が0.99MPaだったとします。
しかし、実際に消火ポンプを選定すると、ちょうど0.99MPaの性能を持つポンプがあるとは限りません。
そこで、最も近い性能の1.20MPaのポンプを採用した場合、
1.20MPa − 0.99MPa = 0.21MPa
となり、0.21MPa分だけ圧力が高くなってしまいます。
この余分な0.21MPaを逃がし、
設定圧力である0.99MPaを維持するのが一次圧調整弁の役割です。

なぜ0.99MPaなのか?
閉鎖型スプリンクラーヘッドは、放水時の圧力が1.0MPa以下となるよう設計する必要があります。
もちろん、配管や継手、バルブを通過することで圧力損失は発生しますので、
消火ポンプの吐出圧力が必ずしも1.0MPa未満でなければならないというわけではありません。
しかし、設計図に一次圧調整弁が指定されている場合は、
その設計意図を理解し、設計図に準じて施工することが重要です。
一次圧調整弁を設置するための「仕込み」
施工前には、次の4つを必ず検討します。
① 消火ポンプからの取り出し口
② 排水先の確保
③ 必要となる付属機器
④ 配管計画と施工上の注意点
それぞれ見ていきましょう。



① 消火ポンプからの取り出し口
消火ポンプには、必ずしも一次圧調整弁を設置するとは限らないため、専用の取り出し口が設けられていないことが一般的です。
通常は、
・メイン吐出口
・流量試験管
の取り出し口があります。
私は、流量試験管の反対側に一次圧調整弁用の取り出し口を設けるよう、ポンプ製作図へ明記します。
後から追加することは非常に大変になるため、この段階での検討が重要です。
② 排水先を確保する
一次圧調整弁は、余分な圧力を逃がすため、水を排出します。
当然ながら、その排水先を確保しなければなりません。
一般的には、排水をそのまま捨てるのではなく、消火水槽へ戻すように計画します。
そのため、
・床スリーブ
・戻り配管
などを事前に検討しておく必要があります。
また、消火水槽へ戻す排水は一次圧調整弁だけではありません。
・流量試験管
・呼水槽
などの排水についても合わせて計画しておきましょう。
③ 必要となる付属機器
一次圧調整弁を設置する場合、調整弁だけを取り付ければよいわけではありません。
まず必要なのが
**制御弁(仕切弁)**です。
この弁がなければ、消火ポンプの締切運転ができません。




次に、ポンプとの縁切りを目的としたフレキシブルジョイント。
さらに、一次圧調整弁を異物から保護するために、
ストレーナーを一次側へ設置します。
これらも忘れてはいけない重要な設備です。


④ 配管計画と施工上の注意点
まず確認するのは、一次圧調整弁の口径です。
私は流量試験管のサイズを参考にしながら、1次圧調整弁のメーカー資料を確認して選定します。
口径が小さすぎると、必要な流量を逃がせず、本来の性能を発揮できません。
また、圧力の仕様にも注意が必要です。
一次圧調整弁は高圧で圧固めに必要とされるため、10K仕様ではなく
一般的には16K仕様が採用されています。
一方、ポンプ吐出圧力が1.6MPa以下であれば、
ポンプ側配管まで全て16K仕様にする必要はなく、一次圧調整弁の前後のみ16K(または20K)フランジとし、それ以外は10K仕様とすることが一般的です。
この仕様の違いを理解して施工することも重要なポイントになります。

私が一番こだわること
ここからは、私自身が施工するときに最も大切にしていることです。
一次圧調整弁は、経年劣化によりオーバーホールでは対応できず、本体交換となるケースがあります。
しかも、サイズによっては非常に重量があります。

だから私は、
「取り付けること」ではなく、「交換できること」
を考えて施工します。
例えば、
・交換作業のスペースは十分あるか
・重量を支えられる強固な架台になっているか
・撤去時に他の配管へ無理な荷重が掛からないか
・ストレーナーとの離隔は適切か
・タイコ配管の長さ・フランジの仕様は適切か
ここまで考えます。
ボルト一本にも理由があります
フランジボルトの長さも重要です。
場所によっては長いボルトでは工具が入らず、締め付けや交換作業ができなくなることがあります。

そのため、
・ボルト長さ
・スタッドボルトの採用
・機器付属ボルトを使用するか
なども検討します。
付属ボルトと現場手配のボルトでは、メッキ色や頭部形状が異なることもあります。
見た目だけではなく、施工性やメンテナンス性まで考えて選定しています。
溶接か、ねじ込みか
今回のような125Aクラスになると、現場加工ではなく工場製作の加工管を使用します。
ここで悩むのが、
溶接にするか、ねじ込みにするか。


一般的に、排水管など内部が空になる配管は、溶接配管を避けることがあります。
内部が乾湿を繰り返すことで腐食しやすくなり、将来的に穴あきの原因となる場合があるためです。
どこを溶接とし、
どこをねじ込みとするのか。
こうした判断も、現場担当者の経験と技術が表れる部分だと思っています。
最後は現場で調整する
配管工事が完了し、消火ポンプから送水できる状態になれば、
・一次圧調整弁のエア抜き
・圧力調整
・必要に応じて圧力計の設置(今回の現場は、不要とした)
などを行い、目標である0.99MPaへ調整して完成となります。
まとめ
配管工事は、図面通りにつなげれば終わりではありません。
そして、
消火ポンプ室は、普段は誰の目にも触れません。
しかし、
その見えない場所にこそ、
現場担当者の経験や技術、そして将来のメンテナンスまで考えた”こだわり”が詰まっています。
私はこれからも、
「取り付ける施工」ではなく、「何十年先も維持管理しやすい施工」を目指して、
一つひとつの現場と向き合っていきたいと思います。
建物のとともに半永久的に残る私の仕事です。


