地上9階建ての新築病院。
この現場は、私が水系消火設備の現場代理人として、初めて本格的に独り立ちした思い出の現場です。
一緒に現場を担当したのは、業界経験わずか半年未満の派遣社員の方と私の2人。
当時の私は、まだ施工図を自由に描けるレベルではありませんでした。
CADで描けるのは、架台や現合管の一部程度。
複雑な施工図は、当時の社長の判断で外部の図面屋さんへ依頼していました。
図面屋さんの単価は1時間3,000円。
そして私が任された請負金額は、1億円を超える現場です。
人件費、材料費、外注費、工事費…。
現場にかかるすべてのコストを背負いながら、工事を進める立場になりました。
今思えば、かなり思い切った抜擢だったと思います。
ですが、
この現場で出会ったゼネコンの担当者さんや職人さんとは、
今でも別の現場で再会したり、忘年会で顔を合わせたりする関係が続いています。
厳しくも温かく育ててもらえた、私にとって特別な現場です。
病院ならではの難しさ
それまでの私は、上司や先輩の指示を受けて仕事をしていました。
しかし、この現場からは自分が現場の責任者。
判断するのも、決断するのも自分です。
しかも病院という建物は、一般的なオフィスビルとは求められる内容が異なる場面も多く、本当に多くのことを学びました。
今日は、その中でも印象に残っている「連結送水管 放水口」の納まりについて紹介します。
連結送水管とは?
イメージしやすく言えば、消防隊専用の”超強力散水栓”です。
水系消火設備では大きく分けて次の3種類あります。
● 補助散水栓
● (屋内・屋外)消火栓
● 連結送水管
連結送水管は消防隊だけが使用する設備で、
建物火災時に送水口に消防車から送水し、各階の放水口にホースを接続し消火活動を行います。
今回施工したのは、その「放水口」です。
最大の課題は「納まり」
設置場所は、外部に面した非常階段。
構造は鉄骨階段とALC壁でした。
ここで一番悩んだのが、配管をどのように施工するかです。
通常のようにコンクリートスラブへアンカーを打って固定することができません。
さらにALCには、
● パネル割り
● 端部からの離隔や、開口ルール
など、守らなければならない条件があります。
そこで私は、
鉄骨階段製作図を何度も読み込み、
「ここしかない」
という位置を探しました。
配管が通るだけではありません。
振れ止めも確実に施工できる位置であること。
メンテナンス性も確保できること。
非常階段の一部に配管を立ちあげるので
建築との干渉、避難に支障ががないこと。
建築担当者、鉄骨製作担当者、ゼネコン設備担当者と何度も打ち合わせを重ね、ようやく到達した納まりでした。




今だから分かること
今の私が見ると、この納まり自体は特別難しいものではありません。
ですが、当時の私にとっては本当に高い壁でした。
だからこそ、この施工例は今でも鮮明に覚えています。
現場監督という仕事は、
学校の成績だけで決まる世界ではありません。
地頭の良さでもありません。
もちろん知識も必要ですが、それ以上に大切なのは、
「目的を理解して考えぬく力」
だと思っています。
「何を実現したいのか」
「そのためには何が必要なのか」
そのプロセスを一つずつ積み重ねていくこと。
この考え方は、今でも現場で一番大切にしています。
当時は必死でしたが、この経験があったからこそ、今の自分があります。
施工写真・図面・画像も添付していますので、放水口の納まりの参考になれば幸いです。











