車を速く走らせる方法は、大きく分けて二つあります。
一つはパワーアップ。
もう一つは軽量化。
では、部下や若手の成長においては、何をどうすべきでしょうか。
私と一緒に仕事をする最大のメリットは、
「トレース」を意識した仕事の進め方にあります。
私が先導し、レコードラインを示す。
そのラインを、若手がなぞっていく。
サーキットにおけるレコードラインとは、
最も速く、かつ安全に走るための理想的な走行ラインのことです。
それは必ずしも最短距離ではなく、
マシンの特性や路面状況、ドライバーの技量によって変化します。
多くのレーシングドライバーは、
このラインをトレースすることでタイムを更新していきます。
仕事も、まったく同じだと私は考えています。
車を速くする方法が「動力の向上」と「軽量化」であるように、
人の成長においても、
知識や経験を増やすこと(パワーアップ)は重要です。
ただし、それには時間がかかります。
一方で、軽量化=合理化については、
私は少し慎重であるべきだと考えています。
経験値の少ない段階での合理的思考は、
往々にして「本質を理解しないまま省略すること」になりがちだからです。
私たちの仕事は、良くも悪くも経験がものを言う世界です。
面倒な出来事や、遠回りに見えるプロセスでさえ、
それをどう乗り越えたかが、次の判断力につながります。
優秀な人とそうでない人の差は、
才能ではなく、
一つの経験からどれだけ学び、吸収し、応用できるか。
私はそこにあると思っています。
だから最初から合理性を求める必要はありません。
私の指導方法は、基本的にOJTです。
やってみせる。
言って聞かせる。
させてみる。
認め、対話し、任せる。
これは特別なことではなく、
仕事のレコードラインを一緒にトレースしていく、
ただそれだけのことです。
結局、私がやっても、部下がやっても、
仕事の本質は「同じ」です。
違いがあるとすれば、
そのラインの取り方を、
どれだけ明確な根拠とポイントをもって伝えられるか。
そこを意識することで、成長のスピードは大きく変わります。
私は、仕事を部下に押し付けることはしません。
かといって、自分がやったほうが速いからといって、
すべてを自分で抱え込むこともしません。
組織としての総力を高めること。
そして同時に、
一人ひとりの成長速度を上げること。
その両立を、常に考えています。
なぜか。
若手には、未来があるからです。


